建設業許可取得をお考えの方で、専任技術者の要件に悩まれている方は必見!!
この記事では専任技術者の基礎知識や要件をクリアする為の解説をしています。
実は、専任技術者を経験でクリアするにはかなりハードルが高いです。
この記事を読めば、要件をクリアする具体的な例を伝授します!!
本記事を読んでわかるポイント
- どういった方が専任技術者になれるのか?
- 必要な資格や経験
- 専任技術者の注意点
専任技術者とは?
専任技術者とは、許可を受けようとする業種に関する一定の資格や経験をもった技術者の事を指して
おり、建設業許可を取得する際は、設置義務が要件となってます。
なぜなら、建設工事の請負契約の適切な締結、その履行を確保する為に
こういった要件が定められています。
例えば、発注した建設会社に経験の浅い職人ばっかりだと困りますよね?
「絶対に技術を持った職人に施工して貰いたい!!」と私なら思います。
なので、「技術を持った職人が常勤していますよ!!」というのを担保する為にも
この専任技術者の設置義務が要件なのです。
専任技術者になれる人
専任技術者になる為の要件として、下記の要件を満たす必要があります。
専任技術者要件 ※一般建設業許可の場合
①国家資格を有している事
②実務経験が10年以上ある事
③実務経験が3年又は5年+所定学科卒業
上記の①~③いずれかを満たしていれば要件はクリアできます。
つまり、社内に資格か経験がある人がいればよいという事です。
ただし、要件を満たしても、実際に証明できなければ認めてもらえないのがハードルの高い理由となります。
証明に関して、①は比較的、他の②、③に比べて、一番手続きがスムーズに進みます。
①の場合ですと、資格を保有している事を証明するだけで要件がクリアできますが、
他の②、③に関しては、実務経験を証明する為の書類を収集する必要があり、
この書類収集がハードルを上げてしまうのです。
では、それぞれ①~③を掘り下げて見てみましょう。
※この要件は一般建設業許可の専任技術者要件になります。特定建設業許可の場合はまた異なる要件になりますのでご注意ください。
①国家資格を有している事
専任技術者の要件の中で最もハードルが低いのが、この国家資格を保有していることです。
原則、実務経験が不要で、かつ証明がしやすいので、専任技術者の要件を満たすのにおすすめです。
ただし、注意点がありまして、「一部、保有していても実務経験が必要な資格がある事」と「取得を検討されている建設業許可の業種に沿った国家資格を有していることが必要」になります。
下記の表を参考にして下さい。
◎は特定建設業許可と一般決業許可の専任技術者 〇は一般決業許可のみの専任技術者
例 建築一式の専任技術者要件を資格で満たす場合(一般建設業許可の場合)
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(建築)
・1級建築士
・2級建築士
上記いずれかの資格を保有していれば専任技術者として認められます。
②実務経験が10年以上ある事
「実務経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験を指します。
例えば、現場監督、施工管理、各種工事の作業員等が該当します。
地鎮祭や竣工式の準備等の単なる建設工事の雑務は該当しませんので、ご注意下さい。
この実務経験が10年が専任技術者で一番ハードルが高い要件となります。
なぜなら、10年分の実務経験を書面で証明する必要がある為です。
滋賀県の場合ですと、実務経験証明書10年分+契約書等3年分が必要になります。
例 管工事を実務経験10年で取得する場合
給排水、衛生、冷暖房、空気調和等の設備を設置し、又は金属等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配する為の設備を設置する仕事に10年以上従事する。
証明方法(滋賀県の場合)
上記の経験を記載した・・・実務経験証明書(10年分)+契約書(3年分)
実務経験証明書→ 記載例はこちら(P88)
契約書 → 「工事請負契約書」や「注文書」など
③実務経験が3年又は5年+所定学科卒業
このケースは所定学科を卒業していると実務経験10年が緩和され、実務経験が3年又は5年に
短縮できるようになります。ただし、許可を受けようとする業種にあった指定学科を卒業していることが必要になります。
実務経験10年が緩和されるケース
・実務経験3年+所定学科(大学)卒業
・実務経験5年+所定学科(高校)卒業
下記は「建設業法施行規則1条」に定めらている表になります。
許可を受けようとする建設業 | 指定学科 |
土木工事業 舗装工事業 |
土木工学、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業 大工工事業 ガラス工事業 内装仕上工事業 |
建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・レンガ・ブロック工事業 塗装工事業 解体工事業 |
土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業 電気通信工事業 |
電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業 水道施設工事業 清掃施設工事業 |
土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業 鉄筋工事業 |
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 |
土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業 |
建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 |
土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業 消防施設工事業 |
建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 |
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 |
土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 |
土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
建具工事業 |
建築学又は機械工学に関する学科 |
本来、実務経験が10年必要なところ、上記の許可を受けようとする建設業に沿った指定学科を
卒業することにより、実務経験が3年又は5年に緩和されます。
例 管工事業を実務経験3年で取得する場合
〇〇大学の土木工学科を卒業後、管工事業に3年従事する
証明方法(滋賀県の場合)
卒業証明書+実務経験証明書(3年分)+契約書(1年分)
実務経験の注意点
実務経験は、経験期間が重複しているものは原則として二重に計算しません。
なぜなら、実務経験のみで専任技術者として認められるのは原則10年につき、1業種のみだからです。
大工工事と管工事を10年間兼業で行っていても、どちらかの業種しか認められません。
つまり、実務経験のみで2業種取得しようとすれば、20年必要になります。
例 実務経験のみで大工工事と管工事を取得しようとした場合
大工工事の実務経験が10年+管工事の実務経験が10年 合計20年 それぞれ10年ずつ必要
※例外 平成28年5月31日までのとび・土工工事許可で請け負った解体工事に係る実務経験は、
とび・土工工事業及び解体工事業双方の実務経験として二重に計算できます。
専任技術者の「専任」とは?
専任技術者はその許可を受けた営業所に常勤して専らその職務に従事する必要があります。
つまり、許可を受けた営業所に毎日所定の時間出勤し、そこで仕事をする必要があるという事です。
法的に下記の者は、原則「専任」のものには該当しないとされています。
- 住所が営業所から著しく遠距離にあり、通勤が不可能と考えられる者
- 他の営業所(他の建設業者の営業所も含む)において専任の技術者となっている者
- 建築事務所で建築士、専任で宅地建物取引士など他の事務所において専任となっている者
- 他で個人営業や他の法人の常勤役員等である者等、他の営業等で専任に近い状態にあると認めらるもの
上記のように明らかに「専任」が出来ない状況は専任性は認められないのでご注意ください。
専任の判断基準としては、勤務状況、給与の支払状況、人事権の状況等により判断されます。
専任技術者は「常勤性」も必要!!
何度も言いますが、専任技術者はその許可を受けた営業所に常勤して専らその職務に従事する必要があります。
つまり、専任技術者は「専任」かつ「常勤」である必要があります。
この「常勤」の部分なのですが、「原則、営業所内で仕事してください。」という事です。
なので、専任技術者は原則、工事現場に出ることは法的には出来ません。
ただし、例外的に営業所に近接し、営業所内の業務に支障が出ない現場であれば出ても良いとなってます。
近接は大体10キロ程度であれば、現場に出てよいとされています。
この規定を破った場合は行政指導となりますのでご注意ください。
専任技術者が欠けるとどうなるの?
建設業許可を取得後、専任技術者が退職や死亡により、不在になった場合は対応が必要になります。
対応は以下の場合によって変わります。
営業所に専任技術者の要件を満たす人がいる場合
不在になった日から2週間以内に専任技術者の変更届が必要
営業所に専任技術者の要件を満たす人がいない場合
他の営業所から専任技術者になれる人を配置する ※他の営業所で専任技術者になっていないこと
どうしても代わりの専任技術者を配置できない場合は専任技術者が不在になった旨の届出を
不在になった日から2週間以内にする必要があります。
その後、廃業届を提出する流れとなり、結果、建設業許可は取り消されます。
なので、期限以内に届出を行う事を忘れないようにしておきましょう。
専任技術者のまとめ
今回は専任技術者について解説しました。
建設業許可の要件、「経営業務管理責任者」に次いで、この「専任技術者」は非常にハードルが高い要件となってます。許可を取得する際もそうですが、許可を取得した後においても「専任技術者」についての知識が無いと、せっかく取得した許可が取り消されるなどの事態に繋がります。
しっかりと知識を持った専門家に依頼するのも一つの手段だと思います。
是非、ご相談下さい。