建設業許可を取得するのに必要な要件は大きく6つありますが、
その要件の1つである「経営業務管理責任者」(通称:経管(けいかん))は
特に重要な要件です。根拠法は以下になります。
第七条
引用:建設業法 第7条 一
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に
適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして
国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
この「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの」というのが、
今回、ご説明する「経営業務管理責任者」にあたります。
では、経営業務管理責任者とは何なのか?
また、一体どのような人がなれるのか?について解説していきたいと思います。
本記事を読んでわかるポイント
- 経営業務管理責任者とは何なのかが理解できます!!
- どのような人が経営業務管理責任者になれるのかがわかります!!
- 経営業務管理責任者になる為の注意点がわかります!!
経営業務管理責任者とは?
経営業務管理責任者とは、建設会社での経営経験がある人の事です。
法人であれば常勤役員、個人事業主であれば事業主や支配人(支配人登記が必要)で、
経営業務を総合的に管理し、執行した経験などを持つ者をいいます。
建設業者が工事施工中に倒産し、その工事が施工できなくなると、
取引会社や工事関係者そして、発注者はものすごい不利益になります。
なので、そのような事を防ぐために、建設業における適正経営を確保することを目的として
経営業務管理責任者という要件があります。
経営業務管理責任者になる為の要件
それでは経営業務管理責任者になる為の要件について解説していきたいと思います。
経営業務の管理責任者になる為の要件は大きく分けて2つになります。
①常勤役員のうち1人が経営管理能力を有している
例えば・・・
建設会社で法人である場合は常勤役員、個人事業主である場合は
事業主または支配人の経験が5年以上あるもの
②常勤役員のうち1人+補佐する者で経営管理能力を有している
例えば・・・
建設会社で法人である場合は常勤役員、個人事業主である場合は
事業主または支配人の経験が2年以上あるもの
+
補佐する者
上記①か②のいずれかを満たしていればOKです。
では、①と②をそれぞれ掘り下げて見ていきましょう。
①常勤役員のうち1人が経営管理能力を有している
「常勤役員」とは、法人か個人事業主で変わります。
法人の場合・・・役員のうち常勤であるもの
「役員のうち常勤であるもの」とは
原則として本社等において毎日所定の時間(休日を除く)その職務に
従事しているものをいいます。
個人の場合・・・事業主または支配人
「支配人」とは
営業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす
権限を有する使用人をいいます。
※支配人登記されていることが必要です。
つまり、法人であれば常勤役員、個人であれば事業主または支配人が
経営管理能力を有している必要があるという事です。
では、「経営管理能力」とはなにか?
下記の表のいずれかの(ア)、(イ)、(ウ)に該当するものになります。
表だけでは、まだまだわかり辛いと思いますので、
具体例に沿ってそれぞれ解説していきたいと思います。
(ア)の「経営業務の管理責任者」
- 株式会社、有限会社の取締役
- 指名委員会等設置会社の執行役
- 持分会社(合同会社等)の業務執行役員
- 個人事業主、個人事業の支配人
- 営業所長や支店長
(イ)の「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」
- 取締役設置会社において、取締役会において経営権限の委譲を受け、
代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験のある
執行役員などがあたります。
(ウ)の「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として補佐した経験」
- (イ)にあたる者で建設業に関する資金調達、技術者の配置、下請業者との契約等
経営業務全般について従事した経験があるもの。
それぞれ(ア)、(イ)、(ウ)に該当するものを説明してきましたが、
全てを理解するのは、非常に難しいと思います。
とは言え、許可を取得するのには必須でクリアしなければいけない要件です。
(イ)と(ウ)に関しては、極めてレアなケースです。
証明も非常に難しく、このサイトの運営者が住んでいる
滋賀県の手引きにも(イ)と(ウ)で証明する場合は、
「事前に監理課へご相談ください」と書かれている程です。
実際、経営業務管理責任者の要件をクリアするほとんどの方が(ア)の要件でクリアします。
つまり、「建設会社で取締役や個人事業主として、5年以上の経験」で、
クリアする方がほとんどだという事です。
ここで1つポイントなのが、5年以上の経験です
この5年以上の経験ですが、建設業種であれば申請業種以外の経験でも可能です。
例えば、申請業種「管工事」の場合ですと、管工事で5年の経験でも良いですし、
他の建設業種の経験5年でも可能です。建設業種であれば、業種は問われていません。
許可取得を検討されている方は一度、社内に上記のような方がおられるか、ご確認ください。
②常勤役員のうち1人+補助する者で経営管理能力を有している
では、2つめの要件、「常勤役員のうち1人+補助する者で経営管理能力有している」
この要件についてまとめた表が下記になります。
②常勤役員のうち1人+補助する者で経営管理能力を有している | |
常勤役員等のうち1人が下記の(ア)、(イ)に該当 | |
(ア) |
建設業の財務管理、労務管理または業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者 |
(イ) | 建設業の財務管理、労務管理または業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者 |
補佐する者が下記の(1)、(2)、(3)に該当する者 | |
(1) | 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者 |
(2) | 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者 |
(3) | 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の業務運営の経験を有する者 |
上記の要件をクリアするには(ア)又は(イ)+(1)~(3)の経験を有する者で
クリアする必要があります。
表だけでは、少しわかりずらい部分があると思うので、具体例を交えて解説していきたいと思います。
(ア)と(イ)の「役員等」
- 取締役
- 執行役
- 組合等の理事
- 事業主
- 支配人
(ア)の「役員等に次ぐ職務上の地位」
- 取締役設置会社の執行役員
- 部署の部長
- 事業主の跡取
(1)の「財務管理の経験を有する者」
- 建設工事を施工するのにあたり必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請け業者への
代金支払い等に関する業務経験
(2)の「労務管理の経験を有する者」
- 社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険の手続に関する業務経験
(3)の「業務運営の経験を有する者」
- 会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験
それでは、どのような人物が社内に必要なのか?具体例を見ていきましょう。
(ア)+(1)で要件をクリアする場合
Aさん・・・建設会社の取締役経験を2年し、建設会社の取締役に次ぐ地位経験を3年した。
Bさん・・・許可申請を行う建設会社で財務管理の経験5年以上した。
上記の経験をしたAさんとBさんが社内にいれば、クリア出来ます。
いかかでしょうか?具体例を見て頂くと、少しは理解が深まったかなと思います。
上記、ご説明した通り、要件にあった人物が社内に必要になります。
ここで、一つポイントなのですが、上記のBさんのような経験は、複数の者で兼ねる事も可能です。
例えば・・・Bさんが財務経験3年しかない場合でも他のCさんが業務運営に関して2年の経験があれば、
BさんとCさん合算して5年になるのでクリア出来ることになります。
では、もう一つの具体例を見ていきましょう。
(イ)+(1)で要件をクリアする場合
Aさん・・・不動産業の取締役を3年し、建設会社の取締役経験を2年した。
Bさん・・・許可申請を行う建設会社で財務管理の経験5年以上した。
上記の経験をしたAさんとBさんが社内にいれば、クリア出来ます。
ここでのポイントはAさんです。
(イ)で証明する場合は建設会社の取締役経験2年しかなくでも、
他業種の取締役経験が3年あればいいということです。
※他業種・・・飲食業や不動産業等の建設業以外の業
つまり、建設会社の取締役経験が最低2年以上あれば、
他の業種の取締役経験でも良いという事です。
経営業務管理責任者は常勤性が必要
経営業務管理責任者の要件を満たしたとしても、
その要件を満たした者が常勤である必要があります。
常勤とは、毎日所定の時間(休日を除く)その職務に従事していることをいいます。
この所定の時間とは、
例えば、1日3~4時間で週2日勤務程度のアルバイトのような勤務ではなく、
1日7~8時間で週5日勤務のような明らかに会社に常勤している勤務状態が必要です。
常勤性が認められないケース
・現住所から勤務地までが遠距離であり、常識的に通勤が不可能な者
・他社の代表取締役や常勤取締役になっている者
・他の業者の経営業務管理責任者や専任技術者、他の営業所の専任技術者になっている者
なぜ、常勤でないといけないのかというと経営業務管理責任者が社内にいない為、
どうしても許可が欲しくて他の会社から名前を借りてきて許可を取得しようとする者を
防ぐために常勤性が求めらています。
経営業務管理責任者の条件を満たしても、証明が必要
経営業務管理責任者になる為の全ての要件を満たしたとしても、
それを役所が求める書類によって証明が出来ないと認めてはもらえません。
書類で証明するには非常に大変な作業で、こういった証明は
経営業務管理責任者の要件を満たすためのハードルが高い理由の1つです。
滋賀県では確定申告書または所得証明書5年分や商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)5年分
工事実績が証明できる書類5年分(場合によっては6年分)などの書類が必要になります。
こういった書類をご自身で集めるのは非常に時間が掛かりますので、
建設業に特化した専門の行政書士に相談することをおすすめします。
経営業務管理責任者の注意点
無事に経営業務管理責任者や他の要件を満たし、建設業許可を取得した後も注意は必要です。
死亡や退職により、経営業務管理責任者が欠けた場合は2週間以内に変更届等の対応が必要になります。
欠けた者の代わりに新しい経営業務管理責任者を置かないと
許可が取り消し処分になる可能性があります。
このような事にならない為にも、社内の役員に経営業務管理責任者の要件を満たす人を
数名確保しておくと対応できるので、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。
まとめ
今回は許可要件の一つ経営業務管理責任者について解説していきました。
数ある要件の中でもハードルが高い要件の一つです。
仮に許可取得を考えている方で現在、要件を満たしていない方でも
要件を知っている方と知らない方では、将来、許可取得できる確率は格段に変わりますので
少しでも確率を上げるために要件の把握をしておくことをおすすめします。