建設業界の方は、最近よく「建設キャリアアップシステム(通称:CCUS)」というワードを耳にする機会が増えたのではないでしょうか?「どういう制度なのか興味はある」「聞いたことはあるが内容を知らない」という方は必見!!制度や導入にあたってのメリットを詳しく解説していきます。
本記事を読んでわかるポイント
- 建設キャリアアップシステムの制度について
- システムを利用するメリット
建設キャリアアップシステムの制度
建設キャリアアップシステム(通称:CCUS)とは建設業で働く技能者の保有資格や社会保険加入状況、現場の就業履歴等のデータをICカードに登録・蓄積する仕組みです。
この制度が導入された背景には、建設業界に若年層の技能者が不足していることや技能者に対する不適切な評価が原因とされております。ICカードにデータを登録・蓄積することにより、技能者の適切な評価を行い、評価に見合った給与の支払いや社会保険加入の徹底等の労働環境の整備を行って、技能者の処遇改善や建設業界に若年層の入職率を高めることなどを目的としています。
2019年4月から本格運用が始まり2022年8月時点で全国技能者約309万人の内、約97万人が登録完了している状況で、2025年までに国土交通省は全国の技能者の登録完了を目標にしています。
建設キャリアアップシステムの概要
建設キャリアアップシステムの概要は、まず技能者の保有資格や社会保険加入状況などの情報をシステムに登録し、技能者にICカードが配布されます。そして、配布されたICカードを現場に入る際に、専用カードリーダーで読み取りを行うと、現場の就業履歴等のデータが蓄積されるという流れになります。
①技能者登録
「技能者」は本人情報や保有資格、社会保険加入状況等をシステムに登録を行います。「技能者」のみならず、「事業者」自体も登録する必要があり、「事業者」の商号や現場名、工事内容等の情報をシステムに登録する必要があります。
「事業者」及び「技能者」の登録はこちらのサイトから可能です→建設キャリアアップシステムHP
②ICカード取得・現場で読取
登録完了後、技能者には「建設キャリアアップカード」という運転免許証のような顔写真付きのICカードが配布されます。このICカードを現場に入る際に専用カードリーダーに読み取りを行うことで、現場の就業履歴が蓄積されます。尚、カードリーダーの設置は元請が行うこととなっております。
③技能者の能力評価
技能者の能力評価は建設キャリアアップシステムに登録されたデータを基にして客観的な視点から「経験」・「知識」・「技能」・「マネジメント能力」を評価することを基本としています。
主に現場の就業日数やシステムに登録された保有資格、職長や班長としての就業日数、技能者講習などから評価を行い、4段階の評価があります。
建設キャリアアップシステムを導入するメリット
建設キャリアアップシステムは、申請や導入の仕組みが複雑ですが、登録をすれば「技能者」「事業者」双方にメリットがある制度になっております。それぞれ解説していきます。
導入にあたる「技能者」のメリット
「技能者」のメリット
①技能者の能力に合った賃金の支払いや処遇の改善
②キャリアを証明できる
③建設業退職金共済事業本部からの退職金が適切に受け取れる
①技能者の能力に合った賃金の支払いや処遇の改善
ICカードに保有資格や就業履歴がデータとして蓄積される為、客観的に技能者の能力が容易にわかります。実績に応じてICカードには4段階のレベルが設けられており、そのレベルに応じた賃金アップや処遇改善に繋がります。
②キャリアを証明できる
建設業界で働く技能者は、様々な現場で働くことが多く、自身のキャリアを証明することが非常に困難でした。しかし、建設キャリアアップシステムを利用することにより就業履歴が蓄積され、自身の経験や保有資格等がデータとして登録されるため、客観的に個人のキャリアが読み取れる為、転職活動やキャリア形成にも繋がります。
③建設業退職金共済事業本部からの退職金が適切に受け取れる
建設キャリアアップシステムの制度を利用することにより、蓄積される就業履歴をデータ連携により掛金充当に活用し、退職金が適切に受け取ることが可能になります。
現在の仕組みは、対象者は参加した現場で証紙を受け取り、その証紙を共済手帳に貼り付け退職時に提出することで、その証紙に応じた額の退職金が受け取れる仕組みです。この証紙の発行・受取が確実に行われいない現状で、データ連携に変更することで確実に受け取れる仕組みになります。
導入にあたる「事業者」のメリット
①出面管理が出来、賃金支払いの根拠が明確
ICカードにデータが蓄積されるため、現場での職種や立場が履歴として残り、それらの情報から賃金の支払い根拠が明確になります。
②企業体制が一目でわかる
事業者情報に雇用する技能者数や保有資格、社会保険加入状況等が入っている為、その情報を見れば一目で企業体制がわかります。なので、適切に体制を整えていれば、取引先や元請業者から信頼を得ることが出来ます。
③事務作業の効率
ICカードで勤怠管理が出来るため、事業者の業務効率化が期待できます。建設業退職金共済事業本部との連動が進むと退職金にかかわる事務作業も効率化が可能です。
建設キャリアアップシステムの利用料金「事業者」
建設キャリアアップシステム利用料金「事業者」は以下の3つになります。
建設キャリアアップシステム利用料金「事業者」
①事業者登録料
②管理者ID利用料
③現場利用料(元請業者)
①事業者登録料
事業登録料は新規登録と更新※の時に必要になります。利用料金は事業者の資本金に応じて変動し、以下になります。※更新は5年毎に必要になります。
資本金 | 利用料金 |
1人親方 | 0円 |
個人事業主 |
6,000円 |
500万円未満 | 6,000円 |
500万円以上1,000万円未満 | 12,000円 |
1,000万円以上2,000万円未満 |
24,000円 |
2,000万円以上5,000万円未満 | 48,000円 |
5,000万円以上1億円未満 | 60,000円 |
1億円以上3億円未満 | 120,000円 |
3億円以上10億円未満 | 240,000円 |
10億円以上50億円未満 | 480,000円 |
50億円以上100億円未満 | 600,000円 |
100億円以上500億円未満 | 1,200,000円 |
500億円以上 | 2,400,000円 |
②管理者ID利用料
登録事業者には「管理者ID」がひとつ発行されます。そのID利用料として毎年11,400円の費用負担があります。年に1度、IDが交付された月末に支払います。尚、1人親方は2,400円の費用負担になります。
③現場利用料(元請業者)
元請として現場を開設する事業者は、就業履歴を1回残すたびに10円の利用料を負担しなければなりません。
*現場利用料の請求例:
20 人の技能者が50 日就業した場合 20人×50日×10円=10,000円
同一現場で朝と昼休み後に2回入場 1人日×1現場=10円
午前と午後で同一元請の別現場に入場 1人日×2現場=20円
建設キャリアアップシステムの利用料金「技能者」
技能者は登録料のみ負担。
建設キャリアアップシステムの利用料金「技能者」
インターネット申請の場合
簡略型:2,500円
詳細型:4,900円
認定登録機関の場合
詳細型:4,900円
カードの有効期限は10年
※申請時60歳以上の方は15年
まとめ
今回は建設キャリアアップシステムとは何かについて解説してきました。
まだまだ現場での普及はしていませんが、国を挙げて取り組んでいる制度になりますので、未登録の事業者や技能者の方はいち早く登録されることをおすすめ致します。